Box #13 Collecting

中嶋孝文

中嶋選手の試合の日、僕は彼が後楽園ホールに来た時から、控え室も帰り道もずっと密着取材させてもらった。

誠に勝手な事だが僕が一番伝えたい人は、何十年後かの彼本人とジムの関係者。

僕の写真を見て人生で熱かった時期を思い出してほしい。

そして、次に伝えたいのは、雑誌を通して一般の人にボクサーの生活を知ってほしい。

だから僕はボクサーの舞台裏を撮り続けたい。

オリンピックを見ていて取材のあり方に疑問を持った事がある。

柔道の福見友子選手の敗戦直後のインタビューだった。

メダルがとれずショック状態で頭の回らないであろう福見選手に敗因や色々な事を質問していた。

その時はインタビューアーに怒りをも覚えたが、それは僕がただ甘かった事に気づいた。

後日、報道側の視線に立った番組を見た。

やはり、断腸の思いでショック状態の選手に敗因などを聴いたり、

事実を伝える為に裏舞台をも記録している。

仕事として、泣いた顔も撮らなくてはいけないし、敗因等も聴かなくてはいけないのだ。

僕が一般の方に伝えたいのは、ボクサーの私生活や裏側の苦労や楽しんでいる生活。

後援会との繋がりや、友人にチケットを売りに歩いたり、減量したり、

リングでは見る事ができない事を伝えたいと思っている。

でもそれってなかなか撮らせてもらえない。

やはり、昔からの繋がりのある方や、何度も撮らせてもらって写真を渡している間柄でないと無理だろう。

そして、そのまとめたものは、このブログだけではなく、

後日雑誌等に持って行って、僕の写真を通して多くの人にボクシングに興味を持ってもらいたいと思う。

Natural Hasselblad

Hasselblad Portrait

ボクシングを撮っているとデジタルカメラの便利さが身にしみるが、

中判アナログフィルムカメラの良さも体で覚えている。

今となってはハッセルブラッドの出番も少なくなってしまったが、

あらためて見返してみると、一枚一枚の力が違う。

Hasselblad 503CW
Carl Zeiss Planar80mm F2.8
FUJI PRO 400H

Box #12 Time

大竹秀典 vs 中嶋孝文

2012年8月6日(月)日本スーパーバンタム級王座決定戦

1位 大竹秀典(金子) vs 2位 中嶋孝文(ドリーム)の対戦は、

2-1のスプリットデシジョンで大竹選手がタイトルを獲得。

日本スーパーバンタム級タイトルマッチ 中嶋孝文選手

日本スーパーバンタム級タイトルマッチ 中嶋孝文選手

午後4時頃、後楽園ホールの外には中嶋選手の地元青森からかけつけた

300人を超える大応援団が横断幕を掲げ彼を待っていた。

日本タイトルでここまで大規模な応援はなかなかない。

彼の人柄の良さを物語っている。

試合は、序盤から乱打戦。

1,2Rは全体的に観て中嶋選手が主導権を握るが、以降は一進一退の攻防。

ラウンドマストシステムで割れたラウンドが多かったはずだ。

中嶋孝文選手

ガンガン打ち合った客の沸く面白い試合になった。

しかし試合後、三浦会長と中嶋選手からは「悪い所がでてしまった」と反省の弁。

いつの日かリベンジし、世界へと挑戦していってほしい。

僕はプロになる前の中嶋選手と練習をしていたが、プロになってからの27戦は1試合も観ていなかった。

練習は数回撮らせていただいたけど、僕の中での彼はまだ試合をしていない練習生のままで止まっていた。

記憶に色がついた気がした。